施工例(薬局・医院)

薬局の照明 27

2021.5~6 埼玉県さいたま市 調剤薬局

 

 

同じ通りに3件の薬局がある北浦和駅前通り。

この中心地に新たに調剤薬局を出されるとのことで

照明デザインを担当させていただきました。

 

 

昔ながらの商店街の一角に建つ薬局

 

 

見通しの良い商店街の中心地、お向かいも薬局です。

建築は日頃からお世話になっている榊住建さん。設計は私の好きな山本氏が

手掛けていらっしゃいます。

 

 

木目と白壁が特徴の建築

 

 

私にとって薬局のデザインは初めての経験でしたので、

照明空間を検討するにあたっては、いくつかのポイントを上げて

検討を進めていきました。

 

 

 

この地には多くの薬局が存在し、建築・照明的に他店と差別化を図ることは

もちろんですが、それ以前に、来局されるお客様の求めるものにミートしている

ことが言うまでもなく大切になってきます。

 

 

 

薬局に求められるものとは・・・?

 

 

建築家とのディスカッションからの得られた共通認識は、

「良い空間を作ることが、来局される方の癒しとくつろぎに繋がる」

「清潔感が大切」「調剤室と待合室にメリハリをつける」ということでした。

 

 

これを骨子として検討を進め、

「待合室は間接照明を中心とした暖色に」

「調剤室はキリっとした明るさの白色に」  決めました。

 

受付カウンター(手前) / 奥の扉が調剤室

 

 

 

ここまでは一般的な空間デザインでも普通に考えると思います。

 

 

私の中にずっとありましたのは、薬局の照明空間を考えるには、美しさを追求するような

デザインのバランス感覚だけでは足りない、ということ。

重要な視点が欠けているかもしれない、、、 ということでした。

 

 

そこで、

日頃から薬局にお世話になる機会が多い、母、義母、他友人に

ヒアリングを実施。そこからある共通した意見が出てきました。

 

 

 

「薬剤師さんが頼りがいがある(ように見える」

「受付の方が優しく受け入れてくれる(ように見える)」

「ゆとりが感じられる」

 

 

 

照度(ルクス)や光の色だけでは解決できない部分ですから、

照明におけるはっきりとした答えはないかも知れませんありません。

 

 

 

妄想と実験の日々・・・。

 

 

 

ガラス越しに見える「信頼感」

 

 

妄想と実験の日々から導いた結論

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

 

「薬剤師さんが頼りがいがある(ように見える照明)」

薬剤師さんと薬に影ができない「直接+間接照明」の手法をとりました(上の写真)。

 

 

また、薬剤師さんの目の疲れに配慮して、PC上部のダウンライトのみ

暖色の光にしました。一般的に光の色を混ぜるのはタブーとされていますが

見えないところで機能を補完する意味では効果的だと私は感じています。

 

 

壁面は白色に、PC上部は暖色に(ダウンライトは待合室から見えないように)

 

 

 

「受付の方が優しく受け入れてくれる(ように、顔が柔らかく見える照明)」

 

これに対しては、受付の方の立ち位置と照明配置が重要になってきます。

また、背面の間接照明と天井ダウンライトの照度のバランスも大切です。

 

 

漆喰壁面の間接照明とダウンライト

 

拝見の照明ややや強めに、天井は柔らかく。

 

 

写真のように、天井の灯りをなるべく抑え、背景を際立たせるようにしました。

顔に光が強く当たり過ぎないように配慮したものです。

 

 

受付の直上部にダウンライトが当たらないようにな配置とし、

目や鼻の下に影が出来ないようにしています。

 

 

洗面台や美容室の照明も同様ですが、表情を柔らかく見せるには

顔の左右両側から光を当てるのが効果的です。

 

 

 

 

 

 

 

一見些細なことに感じられますが、お客様は受付や薬剤師さんの表情や動きを見て

薬局の雰囲気を判断していると思いますから、照明を考えるうえで大切な要素であると

感じています。

 

 

天井照明が少ない照明計画の場合、手元が暗くなりがちなので、

ダウンライトの配置が重要となってきます。

 

「明るすぎず、暗くない」

個人的にはこのバランスが

照明デザインの鍵を握ると思っています。

 

 

 

 

 

 

最後に、「ゆとりが感じられる待合室」。

大切にしたのは、待合室のお客様の視線の先の明るさです。

 

待合室

 

 

待合室の天井照明は明るさを抑えています。

その代わり、目先の明るさを「パッと明るく」でも明るすぎない

間接照明にしています。

正面はシェルフの間接照明、側面は置く壁の間接照明。

 

 

心理的に、自分がいる場所が明るくなく、目先が明るい場合に

人はくつろぎを感じる、と言われています。

劇場の客席で、ステージを見ているシチュエーションになぞって

「劇場効果」とも言われています。

 

さりげなくですが、この効果を応用して、待合室の明るさを少し抑え、

目先の明るさを立てているのです。

 

 

屋外ファサードは縦格子の照明

 

 

”目立つ” ことや ”見栄えが良い” ことが一番重要ではない、ということを

薬局のデザインを通じて深く学ばせていただきました。

 

 

照明がお客様に少なからず影響を与えたり、働きやすさを補完したりする役割があるということを

肝に銘じて、今後のデザインにも生かしていきたいと思います。

 

 

 

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