路地裏のあかり

三度のメシよりものづくり(今村さんvol.3) 6

【今村さん創作ブログ vol.4】 2015.4.24

 ★今村さんご自身からの投稿です。

 

前回の紙モックに引き続き、
製品レベルに高めた鋼板プロトについて報告します。

 


【鋼板プロト 第一弾】


紙モックの構造をそのまま踏襲するような構造で製作しました。
セロテープで固定していた箇所を溶接で行なうため、
鋼板の厚みを1.2mmに統一。
パーツ加工、組立て共に結構な時間がかかります。
つまり価格が高くなるということですね。

 

 

 

 

 

 ●エンジニアリングの領域に入りましたね。
  ここから先は、今村さんと私が長年に渡り切磋琢磨してきた
  領域。武者震いがしますね。楽しいですね、ものづくり!  by管理人
      
  

 


【鋼板プロト 第二弾】


溶接作業をなくし、代わりにビス固定に変更しました。
鋼板の厚みを0.5mmに統一。(溶接だと熱変形するので1.2mmが必要)
ビス等の部品点数が増えるのと、組立てに時間がかかってしまいます。
まだまだ高価格!

 

 

 

 

 ●早々と溶接を回避するあたりさすがです。
  0.5mmtのビス止め、なるほど。部品代よりも組立人件費が
  まだ気になりますね。 by管理人
    

 

 

【鋼板プロト 第三弾】
ビス固定もなくし、パーツ同士を差込み固定できる
方法を模索。(ノックダウン家具のような)
パーツの加工は曲げだけとし、溶接やビス固定は
一切行ないません。
組立ては光源部分のみで、残りのパーツはユーザーが
組立てます。
但し、簡易に組立てられるように、意匠面は
多少犠牲にしています。
    
 ●照明でノックダウン構造!! めちゃくちゃ画期的です。
  考えたこともありませんでした。
  クラフト的な要素もあり楽しめますが、やはり意匠面の突起が
  気になります。
  コストとクラフト要素、デザインのバランス取りが必要ですね。
  何を重視するべきか。
  それは今村さんのアイデンティティそのものかもしれません。 by管理人


【鋼板プロト 第四弾】
パーツの組立てをユーザー自身が行なえるように、
形状、寸法、構造を見直しました。
パーツがばらばらなので、コンパクトに納めて梱包・発送
ができます。
点灯具合ですが、LEDの粒が鋼板白塗装に反射して見えて
しまっています(モックは見えない)
紙モックの表面は微細に凸凹なのに対して、鋼板はより
フラットなので写りこんでしまう。
写りこみを無くすには、紙と同程度のエンボス塗装を施す、
LEDの配置をより奥に移動するなど考えられますが、
どちらも価格に影響します。
悩んだ末に一旦この状態のまま、生活の中で使ってみる
ことにしました。
    
 ●迷ったら、生活シーンで検証してみる!そのスタンスいいですね~
  ユーザー視点を得るには、まず自分からですね。
  そして、最も厳しい意見をくれる家族の意見も収集しましょう!
  (ウチの場合かなり辛辣で萎える場合あり。。)  by管理人


【使用段階での感想】
脱衣所の壁面に取り付けて使ってます。2ヶ月ほど使って気付いた点。
①目線の高さに取り付けた場合、床面板の光の陰影が見えず
 インパクトが弱い。床面板を上方又は下方から眺められる
 位置にあると見栄えがいい。
②床面板にほこりがたまり掃除がやりにくい。

 

 ●なるほど~。2か月使ってみましたか。素晴らしいですね!!
  掃除のしやすさはとても重要なポイントですね。
  大変かもしれませんが、気づいたら即改善、といきましょう。

  ところで空間へのアプローチについても試されましたでしょうか? 
  検証は製品にばかり目が行きがちですが、空間をどのように彩るか
  の視点も必要ですよね(すでに検討されていたらごめんなさい)。
  和なのか洋なのか、リビングが寝室か、どんな時間帯に誰が使うと
  ぴったりはまるのか・・・etc。
  私は自分で灯りを売り歩く中でお客様と会話する際、
  「空間へのアプローチ」の話をもっとも大切にしています。
  それは、灯りを使うシーン、シチュエーションによって
  同じプロダクトでもその見え方、効果が全くことなるためです。
  かなりの照明通でない限り、プロダクトを見ただけで空間を想像
  することは難しいですよね。
  だからこそ、まずは自分ができる限り多様な空間でその灯りを
  味わってみることが、後々大きな意味を持つことになると実感して
  います。
  
  この検証については、私も大いに協力させていただきます。 by管理人

 

応用編
ここまで進めてきて、いい感じに点灯させるためのLEDの配置と
奥壁の関係、2列の家々の配置、床面板の巾など、ある一定の
法則を見つけることができました。
鋼板の構造では、簡易にパーツを組立てられる構造を確立する
ことができました。
まあ、あくまで自分だけの感想なのですが・・・・
今度は見つけた法則と構造で応用製作を試してみました。


  ●おぉぉ、早速応用編ですね。。 by管理人


 【応用編1 円形スタンド】
一見、これまでの形状とかけ離れているようですが、基本配置や構造は共通です。
よっていきなりプロト製作を行ないましたが、予想通りの点灯ぐあいでした。

    

 【応用編2 円柱の家々?】
家々の形状を□ ⇒ ○に変更。紙とスチロール棒で製作しました。
遮光する家々に角がない分、でてくる光は柔らかいものになります。
     


さて、過去に自分で使用する目的で照明器具を作り、
現在も使っているものもあります。
今回のプロト製品も自分で使用する分にはもう完成です。
しかし、販売となるとここら辺りで弦間さんやプロジェクト
メンバーの批評がほしいところですね。

長くなりましたが、これからの課題は
「一般ユーザーに向けた改良」・・・ですかね?

 

 


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●まるで企業の開発チームで造り上げたような
 段取りとアウトプット。
 これを仕事をしながら自分の時間だけで、たった一人で
 やり遂げられたとは、まったく恐れ入ります。。

 正直申しまして、このプロジェクトがここまでの深度と
 クオリティで進捗するとは、私自身思っていませんでした。
 自分の浅はかさが恥ずかしいです。
 みくびるんじゃぁないよ!と怒られた気分でございます。


 ここからは私もやる気スイッチ全開でいきますよ!!!


 さてさて、今村さん、本気で製品化を目指しましょうね。
 それを前提に多少厳しいコメントも挟んでしまうかも知れませんが、
 お互い本音でぶつかり合いましょう(笑


 これまで今村さんが作ったmodelは誰から見ても全てが
 「すごい!!」
 とうなるレベルに達していると思います。何度見ても、随所に
 アイデアが散りばめられていて、良く考えられているな、、、
 すごい、、、思います。

 しかし、恐らくですが、間違ってたらすみませんが、今村さん、
 途中から”エンジニアスイッチ”が入りませんでしたか?

 私も同じことがよくあるのですが、作ることに集中し、完成させる
 ことにフォーカスするあまり、当初自分が大切にしてきた
 感覚的・直観的なデザイン(灯りの風合い、広がり、馴染み)など
 を無意識に素通りしてしまうようなこと、私は嫌という程たくさん
 苦い経験をしてきました。特に単独で行うデザインでは、誰も修正
 してくれませんから、とんでもない所まで遠回りすることもしばしば
 です。
 
 単刀直入に申しますと、
 当初の灯りのコンセプト(路地裏から漏れるあたたかな灯り)が
 やや置き去りになっているように感じた次第です。
 もちろん、コスト感覚は大切です。
 繰り返し制作するためのマスエンジニアリング技術も重要です。
 全てを同時進行でバランスを保ちながら進めていくのは本当に大変な
 ことだと思います。今村さんが作られた”応用編のスタンド”など、
 幾何学的な形状が洗練されていて、この写真を最初に見たならば、
 これは一つのゴールだと私はきっと思っに違いないです。

 しかし、私は今村さんが書いた「スラムから漏れる灯り」に感動し
 それを灯りで表現するというモチベーションに心から期待している
 一人であり、そんな今村さんが目指す灯りが見たくて仕方ないのです。
 もちろん私のためのプロダクトではありませんし、自由創作なので
 何をつくっても良いのですが、おそらく、私以外にもそう感じている
 人が少なからずいるはずです。

 応用編で作られた灯りはとても美しいですが、この灯りはスラムを
 経験していない、今村さんではない誰かでも、ものづくりに長けて
 いれば、きっと作れてしまうと思います。
 今村さんにしか表現できないあたたかさがある、と私は直感して
 います。
 

 私は指導的な立場ではありませんし、これは一つの意見として
 聞いていただければ本望ですが、願わくばもう一度、今村さんが
 最初に感じた(であろう)灯りの本質と向き合っていただけない
 でしょうか。
 
 形状やコストは今村さんのスキルを以ってすれば、どうにでも
 料理できるはずです。だからこそ、ここは急がずに、
 灯り自体にフォーカスしたデザインワークをもう一度一緒に
 やってみませんか?
 ひょっとしたら、もっと線を減らしたシンプルな形が見えて
 くるのではないか、そんな予感もしております。

 もう一度、”急がば回れ”で行きませんか。


 一方的なコメントで失礼しました。
 勇気を絞ってマジに書かせていただきました。

 引き続き、一緒に頑張りましょう。

 

 

【今村さん創作ブログ vol.3】 2015.4.9

 ★今村さんご自身からの投稿です。初投稿ですね!

 

 

 

 

「路地裏のあかり」プロト製作が完成したので、

これまでのレビューをまとめてさせてください。

 

 

過去に自分で使う目的で、照明器具などをいくつも造ってきました。

 

弦間さんや他の参加者には怒られそうな内容ですが、

はじめに僕のやり方を紹介します。

 

 

少し誇張して言えば、僕はコンセプトワークが好きではありません。

じっくり悩んでコンセプトを決めて、それに沿って製品づくり。

これが常道だと思います。

でも僕の場合、それだとなぜだかうまくいかないのです。

しかたがないので僕はイメージ先行で考えていきます。

  

考える基となるのはこれまでに拾い集めた小さなイメージの断片たちです。

例えば、インドで見たスラム街、牛糞壁の家、雨の中の裸電球、

SF映画で見た要塞、白鋼板の温もり、路地裏のくぼみ、LEDの尖り、

落書き、写真、などなど・・・節操などありません。

 

 

一見でたらめな断片たちですが、考え続けている内に勝手に結合し、

自分の求める製品へと導いてくれるのです。

 

 

なかなか信じてもらえないのですが本当なんです。

 

そしてこれら小さな断片たちは僕の場合、すべてイメージなのです。

キーワードや言葉ではなく、イメージ ⇒「画」なのです。

 

僕がコンセプトよりもイメージを優先する理由ですね。

 

 

路地裏の明かりとは

インドに限らず旅をする中でスラム街に対する興味をずっと持ってきました。

不法住居なので、粗末な材料を使った、簡素な造りの家々が幾重にも重なって建っています。

 

夜ともなると重なった家々の奥や隙間から電球色の明かりが漏れてくる。

 

一体、奥はどんな造りになっているんだろう? 明かりの下はどんな感じなんだろう?

 

少し離れた場所から夜のスラム街や路地裏を眺めては想像を巡らすのが好きでした。

 

  

 

 

 

 

と、まあこのような漠然としたイメージからものづくりをスタートしました。

 

 

 

~ 紙を使ったモック製作 ~

 

厚紙とセロテープを使って自由気ままにモックアップを製作します。

まだ何も考えなどなくていい段階だと思っています。

造っていく中で色々なことを思いつければ収穫あり!です。

 

 

 

【紙モック 第一弾】

 

家そのものを表現。家々の隙間と窓から光が漏れるようにしました。

 全部で4軒。光源はミニ電球です。

しばらく眺めていると灯篭(とうろう)に見えてきました。するともう灯篭にしか見えなく

なってしまいました。これでは灯篭だ!

              

      

                                                                           

 

                           灯篭!

 

 

 

 

 

【紙モック 第二弾】

家の数を増やし一軒を小さくすることで“密集感“を目指しました。

光源はライン状のLEDです。

 

0+1プロジェクトのメンバーに披露したのはこのモックです。

みなさんの指摘通り、こぼれる光が眩しすぎますね。

 

 

 

これではラスベガスです!

 

 

 

          

 

                 

                           ラスベガス!

 

 

 

【紙モック 第三弾】

 

眩しさを抑えるためにLED光源に拡散用のプレートを取付けました。

 出てくる光はやわらかいものになり、眩しさは無くなりました。

しかし・・・何だかカッコよくない!

 

 

スラム街や路地裏から漏れだす光はこんなに上品ではありません。

 これではルーバー蛍光灯じゃないか!

 

   

 

       

 

                               

                              ルーバー蛍光灯!!

 

 

 

スラム街の雰囲気、路地裏の雰囲気をもう一度イメージしてみます。

 重なった家々の奥から、地面や壁を伝ってこちらに光が伸びてきている。

 光源は見えないけれども、壁や地面への反射の具合から眩しい光であることは判る。

 

 

 

奥に潜んだ眩しい光を想像しながら何となく眺めてしまう。そんな雰囲気がほしい。

 考えた末にでてきたのは、間接光のための直接光です。(なんじゃそりゃ!)

 

 

 

【紙モック 第四弾】

 光源を最奥の壁から更に窪んだ場所に配置し、家々を1列から2列に増やしました。

 2列の家々は最奥の壁とLEDに対して45度の角度で列になっている。

 

奥の壁、窪みのLED2列の家々を適正に配置することで、どの角度から眺めても光源を見

 えなくすることができました。

 拡散用プレートは使っていないので、家々の壁や床にパキッとした陰影がでました。

 

 

 

 

 

 

 

   

しかし・・・ 暗すぎる。照明なのである程度は光量がほしいところ。

 

 

 

【紙モック 第五弾】

 基本構造は残したまま、家々の配置を見直しました。

 2列目の家々をぐっと1列目前方に寄せました。

 

 

 

 

 

こうすることで2列目の家々に光が当たり、1列目との間にコントラストが生まれました。

 前方に出てくる光の量も増え、より奥行き感が増しています。

 

 

【紙モック 第六弾】

なんとなくブラケット照明かなあ? という思いが強くなってきました。

イメージ優先で進めてきたので、用途についてはこれまで考えていません。(呆れますよね)

 

ブラケット照明に必要な要素を加えてみました。

サイズ感と明るさ、取付ける壁面にも光が漏れる構造など、2サイズで製作

小さい方は手元にあったほうが愛嬌を感じる。(ブラケットではないですね)

 

 

大きい方はブラケット照明としては少々大き過ぎる気もする。

どの角度から眺めても直接光は見えないので、眩しくはありません。

 

 

 

拡散板は使っていないので、反射した光は家々や床面板に濃い陰影を及ぼします。

  

 

 

 

  

紙のモック製作はこの辺りで一旦置いて、ここからはプロトタイプの製作を検討します。

 あれこれ悩み検討した末に、プロトの素材は鋼板で行なうことに落ち着きました。(詳細は省略)

 

 

 

鋼板を使ったプロト製作に関して

 鋼板製品製作の大雑把な流れは次のようなパートに分かれます。(電気作業等は除く)

 

パーツ切出し ⇒ パーツ加工(曲げや溶接) ⇒ 組立て ⇒ 仕上げ(塗装など)

 

 

各パートは関連し合っており、どのパートにどれくらいの負荷をかけるかで、

価格や仕上がりに影響がでます。

 

すべてに最高を求めれば、そりゃあ完成度の高い製品ができますが価格も高くなります。

 構造や仕上がり具合の決定はすべて価格に準ずる必要があるのです。

 さて、これまでメーカー相手には上記の考えでものづくりを実践してきたのですが、一般ユーザーに向けたものづくりは初めてです。

 

 

 

価格や仕上がりに関してメーカーよりも厳しいの? 緩いの?

 考えても判らないので、まずは価格をできるだけ抑える構造を考えたいと思います。

 

 

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